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   メテオラ

走行距離 11090km
訪問都市      40

Meteoras
(ギリシャ)

 

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* そびえる奇岩の上の修道院


何を血迷ったか、南下して、メテオラに来てしまった…


カストラーキの村は奇岩のすぐ麓にある


カランバカの街は観光客でとても栄えている


リッチなホテルから、チープな宿まで、宿泊先には困らない


色とりどりの噴水


夕食は台湾人と小粋なトークを交わしながら

実りの多いマケドニアン・トレイルを終え、そろそろ北に向かって出発しなければ、と思い地図を見た。すると、メテオラという文字が目に入った。

メテオラ… 世界遺産の中でも最も奇妙な風景を持つ場所… いつか必ず訪れて見たいと思っていた場所… ずっと南の方だと思ってあきらめていたのだが、意外と近い。よし、行こう!

そんな感じで、南下してしまった。車の旅は、このいいかげんさが醍醐味だ!と鼻歌を歌いながらハンドルを握っていたが、遠い… 距離にして200キロに過ぎないが、遠い… 曲がりくねった道をトラックに挟まれながら、山をふたつも越えなければならなかった。後悔しながら、後戻りできない青春を生きたのだった。

メテオラは世界遺産を代表する奇妙な風景のひとつだ。その名を知らない人でも、写真を見ればわかるに違いない。空に向かって、キノコのようににょきにょきと岩が伸びている。その岩の上に、どうやって建てたのか、修道院がある。

訪問できる修道院は6つ、公開されていないものが2つある。公開されているものも、今も修道士たちが禁欲生活を送る、生きた修道院なのだ。

だから、受付で働いている修道士は、長い黒衣をまとい、ひげを伸ばしている。「ハロー」と気安く挨拶していいものか、ちょっと戸惑うのだ。

ドレスコードもちょっと厳しい。女性は膝の隠れるスカートを着用しなければならない。男性も長ズボンをはかなければならないし、肩を出してはならない。

メテオラとは、「空に浮かんだ」「空から吊り下げられた」という言葉に由来する。様々な説明が試みられたが、なぜこのような地形が生まれたのかは、今もって不明なのだそうだ。

11世紀に隠者が岩の穴に隠れ住んだのがその起源で、14世紀になってビザンチンの勢力が弱まり、他民族の侵入が増加し、修道士たちは安全な場所を求めて、ここに隠れ住むようになった。脅威が増すに連れて高くに登り、結局、頂上に修道院を築くようになったのだ。

さて、到着したのはもう18時になってからだったので、テントを張ってから、車でカランバカ Kalambaka の街に出た。

メテオラを訪問するなら、人口12000のこの街に滞在するのが一番いいだろう。表通りには無数のレストランが軒を連ねていて、とても明るい雰囲気だ。もっと静かな場所がいいと思うなら、そこから1キロほど離れたカストラーキ Kastraki を選ぶといい。こちらは人口1500の静かな村だが、レストランは充実していて、不便はない。ぼくは両者の中間にあるキャンプ場に泊まった。

街から見た第一印象は、さほどおもしろくない風景だなと、がっかりした。来なければよかったかな、とも思ったが、明日、実際に足を踏み入れれば、きっとすごいものを見ることができるに違いないと期待する。

何を食べようかと歩いていると、たまたま台湾人の青年と出合ったので、いっしょに食事をした。

彼は27歳で、IT系企業に勤めていて、2ヶ月の休みをもらい、ギリシャからトルコ、イスラエル、エジプトと回っているそうだ。ギリシャに来て7日目にして初めてレストランで食べたのだとか。物価が高い、と嘆いていた。ユーロ圏ではギリシャとポルトガルは安い方なのだと言うと、驚いていた。

台湾人は親日派だ。中国や朝鮮では日本人はひどいことをしたことになっているが、台湾ではいいことしかしなかったことになっている。だから、会話もはずむのだ。

中国人や韓国人だと、まるで、仮釈放中の性犯罪者に出合ったかのように、恐る恐る近づいてくる。打ち解けると、「日本人も普通の人なんだね」と言う。いったい、どんな教育を受けているのだろうか。

そんな話は別にいいのだが。ただ、ぼくたちは、国籍を語る前に、個人として他者と出会うべきなのだ。


毎度のことながら、道に迷った… 分かれ道で車について行ったら、結婚式に参列する人たちだった


これはすごい!奇岩群に踏み込むと、こんな光景に包み込まれる

一夜開けて、まずは洗濯。久しぶりの洗濯に、気分まですっきりだ。

6つの修道院は一日で歩いて周ることもできるそうだが、相当な距離になりそうだ。実際、歩いている人たちを大勢見かけた。

各修道院の近くには駐車スペースがあるので、車で周ると本当に楽だ。ただ、道は狭く曲がりくねっているので、けっこう危ない。観光バスも多いし、歩行者が車道を歩いているし、よそ見運転もあれば、いきなり停まって写真を撮っていたりもする。

ぼくはそんなにしゃかりきになって全部周ろうという気持ちもなかったので、11時ごろ、ゆっくり出発。それでも、余裕で4ヶ所を訪れることができた。

それぞれの修道院について、特徴などを紹介しよう。

入場料はそれぞれ2ユーロ。学割は無い。開いている時間は、異なるが、だいたい朝9時から午後5時か6時まで。昼休みを取る場所もある。閉館曜日も異なるので、しっかりと調べて、効率的に周れるように予定を立てるのがいいだろう。開館時間はよく変わるし、季節によっても違うので、カランバカのツーリスト・オフィスで最新のものを入手するのがいい。

ちなみにこの日は土曜日だったので、全ての修道院が開いていた。


見上げるばかりの奇岩の上に修道院があるのだ


階段をのぼって行く。いくつもの修道院を周ると、かなり疲れる


急勾配は近道だが、疲労は倍


昔はこのネットにくるんで、修道士を上げ下げしたという


生きた修道院なので、雰囲気は格別

まずは、カストラーキの村を走り抜けて、少し上り、聖ニコラオス修道院 Moni Agiou Nikolaou Anapafsa にやって来た。

ここは規模が小さいからか、がらがらで、訪れる人はほとんどいなかった。

車を置いて、階段を延々と上る。これはキツい。緩やかな階段と、急勾配の階段と、2種類あって、前者は距離が長く、後者は距離が短い。

内部の礼拝堂は小さいが、フレスコ画で覆われていて美しい。ただ、修道士が余技でやったもの、というような印象を受ける。その手作り感がいいとも思うが。

珍しいのは、「動物を名付けるアダム」のフレスコ画。裸の男の前に、多数の動物が集まっている絵だ。これはおもしろいテーマだ。まるでお釈迦様の説教場面のようだ。動物の中には、翼を持った竜までいる。彼は何語で名前を付けたのだろう。イヒヒ

どこの修道院でもそうなのだが、礼拝堂とミュージアムの中では写真撮影が厳しく禁止されている。見つかると、目の前で削除させられるので、注意が必要だ。


ついに全貌を現した。これが大メテオラ修道院だ!


内部はとんでもない混雑。わけのわからないガキどもをバスで大量に連れて来てどうするのかと言いたい。どうせならゴミ拾いでもさせろ!


こんな狭い入り口をくぐり抜けなければならない。ある種の臨死体験だ


教会の外観


教会内部はフレスコ画で埋め尽くされている。これはすばらしい!


教会の外にもフレスコ画が残されている


ワイン造りは修道士の重要な仕事だった。葡萄は乙女がアンヨでふみふみしなければならないのだが、ここには乙女がいなかったので、機械で搾っていたようだ


かつての厨房。壁際ではなく、中央にかまどがあった。そのせいで部屋中が煤だらけだ


広い食堂。食事の間、当番のものが朗誦していた


偉い人の席は別に設けられており、食器も立派なのだ


ドクロの書かれた看板はなにかな??


うわー!!


街を見下ろす。これまた絶景だ


ネコもいるよ

次にやってきたのは、大メテオラ修道院 Moni Megalou Meteorou だ。これが観光の目玉、最大の規模を誇る修道院だ。駐車場は観光バスでいっぱい。狭い通路を行列しながら、修道院まで上っていかなければならないのだ。

ここはかなり大きい。見るものもたくさんある。教会、かつての食堂、厨房、ミュージアムなど。土産物店も充実している。

14世紀に聖アタナシウスによって建立された。標高613メートルと、もっとも高い岩の上に建つ。

セルビア皇帝シメオン・ウロスがすべての富をこの修道院に捧げ、自ら修道士となった。そのおかげで、ここは本当にリッチだ。しかし、「皇帝」の名に恥じないリッチさかというと少々疑問。まあ、皇帝にもいろいろあったのだろう。

もっとも見事なのは、教会。内部を覆い尽くすフレスコ画がすばらしい。2部屋(部屋という言い方はおそらく間違いなのだろうが、なんと呼ぶか知らない)あるが、最初の部屋は殉教がテーマ。殉教した人たちの死の場面がさまざまに描かれている。処刑方法のオンパレードだ。もうひとつの部屋は東方正教会風の祭壇があり、ドームにはキリスト様が描かれている。

ここのフレスコ画はプロの仕事だ。大勢の聖人や場面が幾何学的に計算されて配置されている。修復の手も入っていて、鑑賞しやすい。

時間がない人は、ここだけ見ればOKではないだろうか。

 


岩陰に隠れるように建っている


これもまた立派

それから、近くにあるふたつの修道院には入らず、西の外れに移動した。

入らなかったのは、ヴァルラアム修道院 Moni Varlaam と、聖ヴァルヴァラス・ロウサノウ修道院 Moni Agias Varvaras Rousanou だ。(日本語のガイドブックを持っていないので、名称はよくわかりません)

どちらもそれなりの規模があるらしく、観光バスが多数来ていた。

聖ニコラオス、大メテオラ、ヴァルラアムの3つは、近い場所に固まっているので、一気に周るのがいいと思う。

そこから西に少し離れているのが聖ヴァルヴァラス・ロウサノウだ。直線距離だと500メートルほどだが、道はずいぶんと入り組んでいるので、1キロ以上はあると思う。

歩くと大変だが、車のない人でも、こういう場所だとヒッチハイクは簡単だ。車に乗ろうとしている人を捕まえて次の修道院まで頼めば、まず断られることはない。

 


人里離れた印象を受けるのだ


狭き門


階段


入るとこんな感じ


周りは岩ばっかり


どの修道院も見晴らしがいい

さらに西へ2キロほど行くと、残り2つの修道院が接近して建っている。

まずは聖三位一体修道院 Moni Agios Triados。 

ここはさびれている。人里離れた、という印象を強く受ける。なぜだろう。他の岩に囲まれているからか、岩が薄黒く汚れているからか。

ここは無料で入れるようだ。管理の人が席を外していただけかもしれないが。

中も暗く、あまりウエルカム・ムードではなかった。見るものもない。

小さな礼拝堂は、やはりフレスコ画で覆われていて美しい。修復の手も十分には入っていないので、時代を感じることができる。

 


堅牢な城塞のように見える女子修道院


正面はこちら。かなり大きい


中はチャーミングで、きれいに保たれている


教会の外側。真ん中にある横木は、タラントンと呼ばれるもので、食事や祈りの時間を報せるために木槌でたたいた


土産物やでは修道女が働いている


よもぎの香りのするステキな中庭


見晴らしのよさ

最後は、聖ステファノ修道院 Moni Agiou Stefanou だ。ここは女子修道院らしく、黒衣に身を包んだ修道女がお土産を売っている。

建物も内部もきれいに保たれていて、男子修道院とこんなに雰囲気が違うものかと驚く。

外観は、6つの修道院の中でもっとも城塞に近い、堅牢な印象を受けた。

中は広いが、うろついても大メテオラほどおもしろくはない。

教会は、大メテオラとほぼ同じ構成と内装を持っている。こちらの方が修復が進んでいる、というよりも、いったん真っ白になってしまった上に新しく描き直しているという気がした。

さて、各修道院でタラントンと呼ばれる木鐸を発見した。紐で吊るした横長の板切れで、教会のそばに必ず置かれている。かつては、祈りや食事の時間を報せるためにこれを木槌で叩いたのだという。

ここに至ってぼくは気付いた。

最初、岩の上の修道院というのは、岩そのものを神聖なものとみなすアニミズム的な思考が働いているのだとばかり思っていた。だが、違う。

彼らは、岩の上の修道院をアララト山に降り立ったノアの箱舟に見立てているのだ。

だから、ノアが出航の時間を報せるのに使ったのと同じタラントンをここでも使用しているのだろう。

まあ、そんな感じで各修道院を周って、18時ごろ、キャンプ地に戻った。干しておいた洗濯ものはきっちりと乾いていた。ぼくが遊んでいる間にも太陽と風が洗濯ものを乾かしてくれたのかと思うと、感謝の気持ちでいっぱいだ。洗濯をたたむと、雨が降ってきた。天までぼくの見方だ。

ところで、修道院の中で聖像などいろいろな土産が売っているが、どの修道院でも同じものを扱っているのだろうと思っていたら大間違い。いいものを見つけたら、迷わずその場で買った方がいい。他の修道院で同じものが売られているとは限らないのだ。

ぼくは、大メテオラで見つけた地図を買いそびれてしまった。古い銅版画の白黒の地図を再現したものだが、小さい方が2ユーロ、大きい方が3ユーロ。かなりほしかったのだが…

このページを読んでメテオラに行くことに決めた人がいたら、ぜひぜひぼくのために、一枚買ってきてください。お願いします。

それと、例え車で周るとしても、相当な距離を歩くことになる。水とチョコは必携だ。大きな修道院の前だと、飲み物やパンくらいは買えるが、高い。

さて、メテオラは不思議な場所だ。街は明るくにぎやかで、修道院では世界のためにあらゆる欲を捨てて祈りを唱えているのに、麓の街では、修道院を食い物にして観光で荒稼ぎ。そう考えてみると、恐ろしくハレンチな場所ではないか。まあ、いいのだが。

(2004年9月25日)

 

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