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   国境への道

 

 (ルーマニア)

 

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* 無事にルーマニアを出国できたことを、涙ながらに感謝


すでにブカレストを越えたところ。ブカレストはあまりにひどい状態で、写真を撮っている余裕すらなかった


街の外では、そう問題はなかった。トラックの噴き出す黒煙にさえ耐えればよかった


ブルガリアの道はこんな感じだ。何にもなさに拍車がかかっている


地層をあらわにした山肌


ああブルガリア

国境まで300キロ。街からは渋滞もなくすぐに抜けられたので、これはいい滑り出しだなと、鼻歌まじりにハンドルを握った。

この日の移動距離は、データ上、380キロ。それほど長い道のりではないが、国境を越えることもあり、朝9時に出発した。道も空いているし、12時にブカレストを通過できるのではないかと期待した。

ひと山越えると、後はひたすら大平原。地図を見ればわかるが、このあたりはまったく起伏がない。広大な農地の中を通る道も、延々とまっ直ぐ続いている。

首都ブカレストが近づくに連れて、風景は変わってきた。通過する街は大きくなり、工場や発電プラントが現れ、木々は枯れ、交通量が増え、トラックの噴き出す黒煙に包み込まれた。

車道の空気汚染は相当ひどい。匂いが違うし、のどはチクチクするし、鼻の中に膜ができるし。やがて、頭がくらくらしてくる。こんな状態が健康にいいわけがない。脳の働きにも悪影響を及ぼしている。どのくらい影響があるかというと、運転しながらいつも歌っている歌の歌詞を忘れるくらい、脳細胞を死滅させているのだ。そのくせ、どれほど考えても出てこなかった2番の歌詞を思い出した。不思議なものだ。

そうこうするうちに、ブカレストに突入。街には入らず、不完全な周回道路を回って、南の外れから抜けるはずだった。が、いつも通り迷ってしまった…

ぼくが悪いんじゃない。看板がきちんと設置されていないのだ。国境の街の名前を示した看板が頻繁に掲げられているのだが、いいところで途切れる。T字路に行き当たって、どちらに行けばいいのかわらかない場所に、看板がない。仕方なく広い道を選ぶと、必ず間違いで、街のど真ん中に入り込んでしまうのだ。

多少迷うくらいならかまわないのだが、路面状態と運転マナー、このふたつから、極限状態とも言える悲惨な一時間を過ごすことになった。

まず、路面状態が最悪。ちょっと裏に入ると、穴だらけ。これこそカークラッシャーだ。30センチ級の穴がぼこぼこ開いている。掘り返したままの道もある。トラックの出入りも多い。工事をしているところも多い。砂利も落ちている。野良犬もふらついている。

さらに怖いのは、大きな十字路に信号がないこと。交通量も多いのに、信号がないから、とんでもない混乱が巻き起こっている。みんな行けるところまで突っ込んでいって、かき分けるようにして行きたい方角に進む。優先順位もなにもない、とんでもない状況になっているのだ。

パリを小さくしたような街だと、ブカレストは言われるが、それは旧市街だけの話。一歩外に出れば、それは発展途上の、まるで戦地のような場所なのだ。

さらにひどいのは、彼らの運転マナーだ。こんな身勝手な運転をする人たちを見たことがない。ルーマニアは最初からヤバいと感じていたが、まさか首都でも同じ状況だとは思わなかった。

彼らはスピードと追い越しの偏執狂だ。絶対に譲らない、減速しない、前に何があるかを想像しない。

横断歩道で歩行者に道を譲ろうものなら、クラクションを鳴らしながら追い越される。横断途中でもお構いなしだ。歩行者は道を渡る時、必ず走らなければならないのだ。

前をトラムが横切ろうとしていたので減速すると、走っているトラムの前に飛び出してまで追い越していく。追い越し禁止の狭い道でも追い越す。しかも前を確認せず、平気で対向車に突っ込んでいく。

右も左も関係なく、好きな方向から追い越す。曲がりたいところで曲がる、停まりたいところで停まる。本当にむちゃくちゃだ。

動体視力と反射神経を試したい人には、ぜひブカレストでの運転をおすすめしたい。もちろん、忍耐力を試すにもうってつけだ。

そんな悲惨な場所でさんざん迷った挙句、なんとか無事に街を抜けることができた。後はほぼ一本道。大平原を南へ進むだけだ。

この辺りでは道路の拡張工事が行われている。舗装したてで、とても快適な部分が多い。風景はひたすら農地。店も何もないし、ガソリンスタンドもほとんどない。

16時頃、ようやく国境の街にたどりついた。一休みして、残っているルーマニア通過でガソリンを補給した。この街も看板が不十分で、税関の場所がわかりにくい。ガソリンスタンドの店員や、道行く人に聞いてみても、だれも知らない。この国の人は国境を越えたことがないのかもしれない。

そうこうするうちに税関に到着。入り口を牛の群れが横切っていく。

まずひとつ目のゲートで15ユーロ取られた。小屋にいるおばさんが、「タックス!ペイ!ペイ!」と叫ぶので、車を降りて払いに行った。領収書にはルーマニアの役所の判子が押してあるので、インチキではないと思ったが、もしかしたら、勝手におばちゃんがやっているだけなのかもしれない。

それからパスポートコントロール。どこに並べばいいか、さっぱりわからない。自家用車やバス、トラックと、各コーナーに看板が出ているが、その通りには運用されていないし、みんなまっ直ぐに並ばない。

ルーマニアの国境にはおそろしい噂がある。荷物を全部引っ張り出して、入国時に申告しなかった高価な品をことごとく没収するというものだ。ルーマニアならあり得る。

トランクを開けるよう指示されたが、バックパックや洗面道具、キャンプ用品など、貧しげなものしか入ってなかったので、問題なく通過できた。

が、ここでは16ユーロ取られた。説明書きがルーマニア語なので、何のための費用かよくわからない。後で領収書を見直してみると、どうも10ユーロ余計に取られたような気がする。国境で金銭を徴収されたのは、ここが初めてだ。一度にまとめればいいのに、二ヶ所に分けて徴収するというのが胡散臭い。

ルーマニアの出国手続きが終わると、長い橋を渡る。この河が国境になっているのだ。橋の入り口にはふたつの柱が建っていて、雰囲気がある。旧ソ連製のカービン銃を持った兵士がひとりだけうろうろしている。つまらない仕事だろう。

ブルガリア側も車はほんの数台しかおらず、すぐに終わるかと思ったが、なぜか時間がかかった。この国境を越えるバスサービスはないと聞いていたが、こんなに時間がかかるなら、確かにバスは運営できないだろう。

パスポート・コントロールの小屋に、「ここでの支払いはありません」とか、「不審な点があれば、下記に連絡してください」という貼り紙がしてあった。つまり、勝手な理由をつけて係り官が旅人から金銭を巻き上げてはポッポナイナイしていたということだろう。それは大いにありうることだ。そして、ぼくが支払った余分な額も、同じように彼らのポケットに消えていったに違いない。

パスポートコントロールの次に、道路使用料というのが徴収される。入った場所と出る予定の場所に応じて金額が変わる。ぼくは14ユーロ取られた。後で見直してみると、もらった領収書と支払った額がまた違う…

これで無事に入国かと思ったら、今度は消毒費用を2ユーロ取られた。タイヤに付いた土を落とすことによって、害虫や外来植物が持ち込むことを防ぐ防疫措置だ。何をするのかと思うと、腐った水の貯まった道を通らされただけ。こんなことが役に立つのか、疑問だ。

そんなこんなで、合計47ユーロもかかってしまった。これが適正な額だったのかどうか、詳しい人がいれば、ぜひ教えてほしい。日本に帰ったら、ブルガリアの観光案内所に聞きに行ってみよう。

いずれにせよ、路上がカオスと化したルーマニアから、事故も起こさずに抜け出せたことを感謝しなければならない。もうルーマニアに車で行くことはないだろう。

(2004年9月14日)

 

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